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『坂本龍馬の誕生日』

あのね、坂本龍馬の命日、つまり京都の近江屋で暗殺された日が11月15日なんだけど、この日は奇しくも彼の誕生日だったんだよ、という人がいる。

 そんな時、僕は大抵、良くご存知ですねえと答える。

 でも、どこにそんな根拠があるんですか？と続けたいのが本心だ。

 今まで、坂本龍馬の誕生日についてあれこれと調べてみたが、明確な資料は何処にもなかった。

西暦に置き換えると、誕生日の天保11年11月15日は1836年1月3日で、命日の慶應3年11月15日は1867年12月10日になる。

 あれ、ズレてんじゃん。

 そりゃあそうだろ、何故なら当時は和暦、つまり月の動きによる暦を使っていたわけだから。

 だから当時は誕生日なんて感覚はなかったんじゃあないの？

 西暦から割り出すと、彼の生涯は31年11ヵ月ということになりますね。

 実はこの誕生日の出どころは、一人の女性の曖昧な記憶から。

 彼女の名は『りょう』龍馬の妻である。

 明治になって坂本龍馬が主人公の新聞連載小説の後日談として作者がおりょうさんにインタビューしている。

 その際も『11月15日と聞いたような、いや10月15日だったような気もする・・・・。』と、かなり曖昧。

 したがって、命日が誕生日と同日の方が『暗殺』がよりドラマチックになるので、誕生日の件は作者の創作だと思う。

 このおりょうさん、明治39年まで生きていて数々のエピソードを残している。

 例えば、新撰組の近藤勇に言い寄られたとか、薩摩の桐野利秋に夜這いをかけられたとか、男装して京都の祇園で龍馬らとドンチャン騒ぎをしたとか、巌流島に龍馬と上陸して花火を打ち上げたなど様々あり、恋敵だった千葉さな子のことなどをボロクソに述べている。

 幕末の国民的英雄、坂本龍馬の誕生日の出どころが、まったく信憑性のないということを知っている人は少ない。

 さあ、お仕事始めましょうか。

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