日日是好日 ちょっぴり文学好き 夏目漱石著 『こころ』②
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『先生』には以前、『K』という同じ下宿に暮らす友人がいた。
『先生』の妻はその下宿先の娘で、『K』が好意を寄せているのを知りつつ、先に娘の母親に相談して結婚の許しを得た。娘の『静(しず)』もまんざらでもなく、結婚が決まった。
その話を知った『K』は二日後に自殺した。
後悔の念で綴られた遺書には、このことは妻には伝えないでくれと書いてあった。
これで小説は終わり。
でもこの小説、よくわからない。
三角関係のもつれが原因で二人の男が死ぬわけだが、どちらも『死ぬほどのことじゃあないんじゃないの?』という気がする。
実はこの小説、人間関係のもつれや恋愛の悲劇がテーマではなく、『死』に対する新しい時代の価値観がテーマではないのか?
遺書中にも登場する『明治天皇崩御における乃木希典殉死事件』が起きる。
事件を簡単に言うと、明治天皇が崩御した際、陸軍大将であった『乃木希典(のぎ まれすけ)が夫婦で『後追い自殺』をする。
理由は、西南戦争の時、『軍旗』を薩軍に奪われたことと、日露戦争の際、自分の指揮でたくさんの兵隊を殺してしまったからだ。
言い換えると、乃木さんはずっと『死に場所』を探していて、ここが『先生』も自分と同じだと感じたに違いない。
『殉死』というすっかり忘れ去られた遠い昔の武士の美徳が、明治から大正へと移り変わる世の中で起きたことについて世間は驚き、二つの意見が出てくる。
ひとつは、『あっぱれ、見事な行為だ』と『なにも死ぬことはないんじゃないの?』のふたつだ。
そもそも『明治』という時代は、それまでの封建的社会を打ち壊して誕生した。
すなわち、封建的美徳をもって明治を生きてきた人には『あっぱれ、見事な行為』で、大正へと時代が変わり、新しい価値観、つまり『殉死』という古い価値観や美徳を持たない人たちからすれば『なにも死ぬことはないんじゃないの?』ということだ。
したがって、この小説で漱石が問いかけているものは、人間関係のわずらわしさに疲れ、恋愛のゴタゴタで『K』を死なせてしまった『先生』の物語ではなく、明治から大正へと新しい時代へ変わっていく中での『死に対する人間の価値観の変化』を『あなたは、どう思われますか?』ということなのだ。
だから、令和の時代に生きている我々にとって『乃木希典』と『先生』の死は理解し難い。
幾つかの時代を経て、2人の死が絶賛される時代が再び訪れることがあるとしたら、その時、日本はどう変わっているのだろう。
理解しがたいこの小説、今までに700万部ほど売れているらしい。
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