つれづれなるままに~日々是好日 ちょっぴり文学好き
九州市若松区のエコタウン内にあるヒューマンブリッジ株式会社NKRC事業所です。
『午後の曳航』 三島由紀夫
曳航とは、船が船を引っ張って航行することで、作品の終盤でその意味が解るようになっているのですが、意図として『栄光』を連想させているわけです。
たとえば、正午の位置にある太陽が天空の頂点に存在し、その輝きを鼓舞するものだとすると、午後からは次第に高度を下げ、仕舞いには没し消えてしまいます。
すなわち、最終には悲劇がありますよ、ってことですね。
『午後のえいこう(栄光)(曳航)』というタイトルが浮かんだ時点で、この作品は作者にとって、たぶん完成したんだろうな、と思います。
主な登場人物は3人、船乗りの男、ブティック経営の未亡人、そしてその息子。構成は『夏』と『冬』の2部。
ここが、三島文学の醍醐味である対比です。『どこまでが』と『どこからが』ってことです。
夏の部は逞しい肉体を持った船乗りと未亡人の官能的な恋愛小説です。それと、14歳の少年が描く海の男が持つ『栄光』へのあこがれです。その栄光は、まるで真夏の陽射しの如くで、眩しくてその輝きに思わず目を細めてしまうほどの輝きだったのです。
ところが、冬の部では一転してしまいます。男は海にその栄光を見出せず、船乗りを辞め未亡人との結婚を考え、父親に なろうと決心し、ブティックの経営を手伝うために美術書などを読みセンスを高めて接客に活かそうとするわけです。少年にしてみると、栄光に彩られた海の男が、商売人になって客に媚びる姿を想像すると我慢できないわけですね。
本文の描写にもあるのですが、この船乗り見事な肉体を持っています。つまり、作者三島由紀夫自身を表しているわけです。
戦争が終結するまでは戦って天皇のために死ぬことが、彼にとっての栄光だった のですが、戦後は小説を書き、しかもそれが売れて経済的にも裕福になって、そんな日常に置き忘れてしまった大切にしていたものを捨ててしまっている自分が許せなかったのでしょうね。
この辺に気付くとグッとくる訳です。タイトルの持つ意味が。
そして、小説の中での海の男の結末に作者自身の願望を重ねています。
結末を書いてしまうような野暮なことはできませんので、まだお読みになっていない方はお読みになってみてはいかがでしょうか。きっと、グッときますよ。
そして、ラストの1行・・・・。『誰もが知るように、栄光の味は苦い』だって。
ああ、もうダメだ。また読んじゃおうっと。
文章のリズムと万華鏡の中に拡がるような綺麗な比喩に三島作品の魅力を感じます。それと文体から伝わる作者の文章への自信です。
そんな文章を書ける大人になりたいと、ずっと思っていました。もう、大人になってずいぶん経ちましたけれど・・・・。
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